「雪」 感想

投稿者: | 2011-09-08
岩波書店
発売日 : 1994-10-17



知床のテントの中で読み始めた、雪は天からの手紙である・・・という有名な言葉が載っている本。

昭和初年。雪と言えばまだせいぜい美的興味かはたまた生活の障害物でしかなかった時代に、筆者・中谷宇吉郎氏は雪の結晶を撮影し、分類・体系化し、さらには種々の条件下で人工の結晶を作って空の大気状態を類推するところまで研究を進め、世界的な評価を得た。その経緯…そもそもの関心の所在や、研究のあらましを伝える本である。

もっともこの本は、一般読者への啓蒙が主眼という通り、学問的なものではない。結晶の撮影のために十勝岳の白銀荘を借り、雪が降らない時には仕方がないから山スキーでもしようとか、北大の低温施設で満州の哨兵のような恰好で実験を進めたとかの軽口を交えながら、さらりと軽妙に書かれている。もちろん、厳寒の中で、しかもコンピュータや上等な光学機器もない時代に、地道な試行と考察の繰り返しは生半可な苦労ではなかったろう。

昭和13年頃に書かれた薄い文庫本というのはそれ自体なんだか味があるし(蛮族とか裏日本とかいう単語にはどきっとするけど)、その文体の香りとともに、まだ日本に自信があった時代の知的好奇心と学究精神を伝えてくれる好著である。

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