「もっとも美しい数学 ゲーム理論」 感想

投稿者: | 2010-12-13

ゲーム理論の入門書か啓蒙書のつもりで買ったら、「ゲーム理論でなにができるか」を説いた本なのであった。

お話は、アイザック・アシモフの「ファウンデーション・シリーズ」から始まる。このSF小説は正直言って未読だが、作中の数学者ハリ・セルダンが作り上げた「心理歴史学」がキモであるという。これは人間の行動を数学的に記述するものであり、ひいては人間社会が今後どのような道筋を辿るかを数学的に予言することができるという。

スター・ウォーズみたいなおとぎ話でしょ、と一言で片づけるのは簡単だが、ゲーム理論を発展させることでこの「心理歴史学」が実現できちゃうのではないか、という驚きの主張がこの本のテーマなのである。

ゲーム理論とは要するに(オレにはよくわかっていないので要するしかない)、ある特定の条件下において、利害が異なる複数の主体の間で生じる、戦略的な相互関係、を研究するものらしいが、さらに要すれば、複数者間のせめぎ合いをガクモンするものというところか。

実際の人間社会の中ではその条件、主体、関係は複雑すぎて、ニュートン的な決定論では割り切れないことがわかって来た。そこに導入されたのが統計力学や確率論で、ここに至ってようやく人間行動の複雑さを解析できる可能性が生まれたのだという。ゲーム理論によって、化学、生物化学といったミクロから、人間個々人の営みや経済行動といったマクロまで、シームレスに統合できる大統一理論が生まれる可能性がある…と壮大なビジョンをこの本は見せてくれる。

確かに人間は、気体の分子のように寄り集まったり衝突し合ったりしてある「状態」をつくっている。個々の動きは必ずしも合理的ではないし、相手関係によってコロコロ変化する。で、全体としてある方向へと進んでいる。著者は人間を分子になぞらえるのにためらいを感じるようだが、例えばアダム・スミスの「神の見えざる手」とは、まさに人間社会の分子的なふるまいを言い当てているように思われる。

このほかフォン・ノイマンやナッシュ(「ビューティフル・マインド」の主人公)らの偉業に言及しつつ「ゲーム理論とはなにか」の説明もしてくれるし、翻訳(冨永 星 氏)もこなれていて大変読みやすい本なのだった。

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なんともワクワクさせられるお話だったが、社会事象の「結果」をうまく説明することはできても、正しく「予言」することまではどうなのかな。

不完全性定理(人間には結局人間のことは分からない)もあるし、社会を正しく再現するためには結局社会そのものを作らねばならない(つまり、端折ってもそれはしょせん似姿にしか過ぎない)ということもある。

それに、たとえば分子などと違って人間は総勢集めてもたった70億しか存在しないわけで、その明滅を眺めても確かな絵は描けないだろう、と思うのである。

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