ダメになったことをあげつらう本じゃなくて、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けてどう立て直したらいいかを、宗茂さん以下、日本記録を出した7人のマラソンランナーたちへのインタビューなどで解き明かす本。一般ファン向けというよりは、いま練習に取り組んでいる選手向けの提言である。
宗兄弟や瀬古さん、中山さん、谷口浩美さん(はこの本には出ていない)など、日本の男子マラソンはかつて、世界を牽引する存在ですらあった。ところが、この本が上梓された時点でオリンピックなど国際舞台で上位に入る選手はほぼなく、日本記録も14年間も破られて来なかった。それはなぜなのか。
ペースメーカーがついたタイムトライアルではアフリカ勢らに敵わなくても、単純にスピードだけでは済まないオリンピックなら勝てるかも知れない・・・。意識の持ち方、どんな練習をしたら相手に勝てるかを自分で考える力、オーバーワークを恐れないこと。往年の名ランナーたちがどんなメンタルで、どんな努力をしたか、その鬼気迫る練習っぷりと、理路整然とした語りっぷりが見事。
この本のあと、今年の2月に設楽悠太選手が16年ぶりに日本記録を更新した(更新の報奨金1億円を手にしたという)。設楽選手のやり方はこの本の軸線とは異にしているようだが、さて、日本開催のオリンピックで、日本ランナーの復権はあるのだろうか。