「がいなもん」 感想

投稿者: | 2018-10-01

北海道命名150周年ということで、この肖像画もよく目にした一年だった。あっという間に過ぎつつあるけど・・・。

松浦武四郎、「北海道(北加伊道)」という名を建議したその人である。

飄々とした表情ばかりが印象的だが、写真全体を見ると、短軀な中にも手首の異様な太さとか、姿勢の良さ、よく発達したげな足腰とかが目につき、余人の追随を許さないとんでもない健脚だった、というのにも頷けるものがある。

で、この本。

著者 : 河治和香
小学館
発売日 : 2018-06-08



「がいなもん」とは彼の生地伊勢の方の言葉で、(ネタバレかも知れないけど)途方もないヤツとか、とんでもないヤツとかいう意味だそうだ。そのタイトル通りの、破天荒な生涯を綴った一代記である。

16歳で、奉公先の主人の頭巾を無断で換金したのがバレて出奔。以来の、あきれた行動力、収集癖を始めとする奇人っぷり、市井に収まらない大きな魂といったものが、小説形式で痛快に描かれる。

小説は、絵師河鍋暁斎と娘の暁翠(お豊)が一種の狂言回しとなっていて、これが物語に文字通り彩りを添えている。河鍋以外にも、龍馬、海舟なども含む豪華な交友関係も読みどころだ。

蝦夷地に3度も渡り、アイヌ語地名9,800を収集したというのが物語のハイライトではあるが、蝦夷地をくまなく巡り、アイヌたちとの交流を深めるにつれ、やがて松前藩の暴虐や無責任に気が付き、アイヌ政策を巡る軋轢が表面化してくる。

“この幽玄な大地は、(和人ではなく)神とアイヌのものではないか。”・・・単なる探検、冒険ではなかったのである。

*

さて「北海道」だが、実際のところは武四郎の完全オリジナルというわけではなく、東海道・西海道などの言葉がある中で、既にある程度コンセンサスを得た名称だったようだ。それを「北加伊道」と表記したところに独創性がある。「カイ」を強調したかったようだ。

武四郎自身が既に「北海道人」と号していたため、上記の軋轢うんぬんゆえ自分が言い出しっぺとバレバレになってはまずいという事情もあったようだが、そもそも「蝦夷」を音読みしたらカイだろう、という(オレにとっては)青天の霹靂にも似た事実がある。考えたこともなかったけど、ホントだな。

さらに、カイはアイヌが自らの国を呼ぶ名であるという。ただしそのような言葉はアイヌ語にはなく、カイナーとかカイノーとかいう言葉(この国にお生まれになった人)からの敷衍である、ともいう。
この言葉は手元にあるアイヌ語資料からは確認できなかったので、ちょっと肩すかしを食ったような気がしないでもなかった。

今回著者が書き足りなかったという、蝦夷地での具体的な行動、アイヌたちとの交流などは読んでみたいものである。

なお、小説に出て来る「武四郎涅槃図(午睡図)」も、検索したら出て来るので見てみたらいいと思う。(暁斎の鬼才っぷりもよくわかる)

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