「ドグラ・マグラ」 感想

投稿者: | 2019-06-30
著者 : 夢野久作
角川書店
発売日 : 1976-10-01



これも40年前に読んでてもおかしくない本だけども、ついに読了。

これを読む者は一度は精神に異常を来す、とか、日本探偵小説三大奇書、とか脅すもんだから身構えたんだけど、確かに奇妙キテレツな話ではあったけど、大した真っ当な本であった。

まず、作者の「キ●ガイ」に対する異様な傾斜がある。「キ●ガイ」(大時代的な単語ではある)とは何かについてとことん考えた結果が、この本に結実しているんではないかな。

小説の中にドグラ・マグラという小説が出て来たり、主人公たる「私」からして記憶を失った(認識を失った)曖昧な存在であること、「犯人」が複雑な入れ子になっていることなど、非常に理解が難しいことも確かである。

前半は、後半の謎を導くための学術資料のようになっていて(まあ、犯行の動機にも繋がるわけだが)、これが大いに読ませる。

脳髄は物を考えるところにあらず
夢のからくり(細胞、部分が見るのだ)
胎児の夢(承服しがたい部分もある)

ほか「自白心理」などのくだりも含め、トンデモどころか、心理学か認識論の科学新書を読んでいるような気持ちにさせられる。迫真の説得力である。

後半はなるほど「父」との長い問答を通した犯人捜しの様相を呈してはいるが、上記のような念入りな理屈づけによって、決して荒唐無稽ではない迫力、凄みを生み出している。

小説は、そうした「キ●ガイ=精神(認識)の大伽藍」を表現しながら、学術研究の業(ごう)といったものを浮き彫りにしているのかも知れない。

*

ところで、脳髄のくだりで「脳髄の罪悪史」という5項目が出て来るが、これが実に慧眼であると思う。曰く、脳髄の発達は、

・人間を神様以上のものと自惚れさせた
・人間を大自然界に反抗させた
・人間を禽獣の世界に逐い返した
・人類を物質と本能ばかりの虚無世界に狂い廻らせた
・人類を自滅の斜面(スロープ)へ逐い落とした

※独自の「いいね」ボタンです。このブログの中だけで有効で、害はありません(笑)
  • いいね! (0)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください