直木賞と本屋大賞をW受賞というスゴイ本。
日本で開催されるある国際ピアノコンクール(「浜松国際」を下敷きにしているらしい)を舞台に、「ピアノの才能(天才)とはどういうものか」を描く。
変な連想だけど、映画「私をスキーに連れてって」を思い出す。こんなのがあったらスキーは面白いだろうなあ!というアイディアをテンコ盛りにしたあの映画みたいに、いろんな天才が一堂に会したらすっごいだろうなあ!という発想で組み立てたのがこの小説かも、と。
音楽コンクールという異形なもの、裏方さんや審査員、家族や友人たちの目線、心の動きなども、余すところなく描かれている。また、原初的な音体験(「蜜蜂と遠雷」)や音の遊び(交歓)が感受性の源泉になっているとか、評価する側も(こそ)問われるのだ、といった描写には大いに説得力がある。
作者自身ピアノを弾くそうだけど、ピアノの名曲の数々(コンクールの定番曲が多いみたい)が小説全編に響き渡っているのも魅力。
さてコンクールが終わり、天才たちの結末(審査結果)は?
正直言うと「へえ」ってな感じではあったけど、まあお話のテーマがそこへ収斂してるんだな、と思えばこちらも大いに納得であった。