「オシム 終わりなき闘い」 感想

投稿者: | 2019-08-20
著者 : 木村元彦
小学館
発売日 : 2018-06-06



以前読んだ「オシムの言葉」の続編というか、脳梗塞に倒れ、帰国したあとの後日譚に当たる。

旧ユーゴスラビア解体の動きの中で、それまでの隣人同士が銃で撃ち合うような事態に発展したボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の戦火に、家族もろとも翻弄されながらサッカーを続けてきたオシム氏。

サッカーは、分断された国にとって唯一のアイデンティティーとさえ言える存在だが、やはり分裂状態にあったサッカー協会を再び一つにまとめ上げ、ワールドカップへの出場を成し遂げるまでの「正常化委員会」での大仕事を中心に描く。

クロアチア・セルビア・ムスリムの3つの民族が入り乱れているだけでなく、社会格差も拡がる分断のさまは余りにも複雑で、この本を一読しただけではとても噛みきれないが、そんな中で力を発揮したのが、オシム氏の経歴(国民の尊敬を集めるサッカー選手であり、監督であった)や不偏不党の精神であり、各国のコワモテ指導者を納得させたオシム氏への信頼なのである。

文字通り「国」を支えているサッカーそのものも違えば、そこに向かう氏の覚悟も全然違う。

そんな人が日本へ監督としてやって来て、代表監督まで務めたというのは、ほとんど奇跡的なことのように思える。

本は、そうした中でのオシム氏の動きや心中を、著者ならではの鋭さで引き出そうとする。この本にも、覚悟を受け止める真摯さ、切実さが溢れている。

今、分断は落ち着いているかに見えるが、キケンな民族主義は再び胎動を始めているという。人間というのは、どうして学習しないのだろうか。

なお、ハリルホジッチ氏がいかに日本代表にとって大事だったか(解任は失策であった)、日本サッカーには「日本化」が必要だなど、興味深い話も掲載されている。

※独自の「いいね」ボタンです。このブログの中だけで有効で、害はありません(笑)
  • いいね! (0)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください