「アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」」 感想

投稿者: | 2019-08-25
著者 : 中川裕
集英社
発売日 : 2019-03-15



この本読みたさに「ゴールデンカムイ」を読み進めているところ。

「ゴールデンカムイ」は、アイヌやアイヌ文化にしっかり敬意を払い、できるだけ考証的事実に即して冒険活劇を作り上げている。多くの人が、アイヌ文化に目を向ける機会にもなっていて評価が高いマンガ作品である。

著者・中川裕氏はその作品でアイヌ語監修を務める。もともとアイヌ学の泰斗だが、豊富な場面例とともに、その意図や背景を順に解題する。

お話にない部分も含めて、アイヌの歴史や習俗、方言の取り扱い(著者が習ったフチのエピソードとか)などへ話題が拡がって大変面白い。

マンガ(電子書籍)を読んでいても気がつかなかったアシ(リ)パの服とか、なにげに身につけているキロランケの耳輪の話など、作中で特に説明されていないものもいかに深くうまく描かれているかがわかる。今後読み返した時に、かなりニヤニヤできそうである。

一方で、お話が独り歩きを始める面も指摘する。「ヒンナ」という言葉の意味とか、杖で滑雪するなどマンガならではのシーンなどについては、やや心配されている。

いかに事実を誠実に汲みとっているとはいえ、基本は物語。この作品ですべての知識を得る人もいるだろうし、かと言って厳密過ぎてはお話にならない。影響が大きくなっているだけに、そのへんのさじ加減は難しいだろう。「監修」のご苦労が偲ばれる部分である。

ところで、手塚治虫の「シュマリ」という作品の話も出て来る。あれが描かれた当時は「いろいろ複雑な問題をはらんでいるから」として、主人公を和人にせざるを得ないなど思うようには描けなかったと手塚氏が語っていたけれども、今はこうして大らかな作品が世に出るようになった。隔世の感を新たにした。

野田サトル氏(「ゴールデンカムイ」の著者)書き下ろしの挿話、石川直章氏(小樽総合博物館長)による、お話の舞台が小樽であることや、瀬川拓郎氏(「アイヌ学入門」の著者)による、アイヌと砂金についてなどの寄稿も素晴らしい。

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