「ホロヴィッツ・ピアノの秘密」 感想

投稿者: | 2019-08-29
著者 : 髙木裕
音楽之友社
発売日 : 2019-05-31



名ピアニスト・ホロヴィッツと、ピアノの「巨匠時代」をサポートしたスタインウェイ社C&A部との華麗なる関係を、日本人調律師の目から見たルポルタージュ。

まず、調律師って、音合わせの人だとオレも思ってました(スイマセン)。

そう単純ではないのである。レーシングマシンのメカニックよろしく、その場所・その環境・そのプレイヤーに合わせた最適解を用意する玄妙な仕事なんである。

中でも巨匠中の巨匠であったホロヴィッツは、よほど気に入ったもの以外のピアノは弾かなかったそうだ(世界ツアーとかでも自分の楽器を持ち運んで演奏した)。その孤高の超感性をフルサポートしたのが、スタインウェイのコンサート&アーチスト専門部隊、すなわちC&A部なのだった。

極めて特異な奏法が、極めて特異なピアノメカニズムに支えられて、極めつけの演奏の数々を生み出したんだなあ。

著者は、そのビジネスモデルを学び、さまざまな楽器を所有してコンサートホールやピアニストのニーズに応えるサービス会社を起業した。そのラインナップの中には、実際にホロヴィッツが弾いた(気に入っていた)ピアノや、プレイエル(ショパン)、エラール(リスト)といった歴史的な楽器も含まれており、実際に作曲された時代の音を体験・再現できる環境を揃えているという。

なかなか遠大な話なのである。

ショパン、リストといった話になると、いささか郷愁みたいな話に聞こえなくもないんだけど、徐々に時代が下ると、聴き映えのするある意味アクロバチックな演奏や、大きな箱(ホール)で大きな音を鳴らす必要性が生まれて来た。その流れに合わせて、スタインウェイの機構も発達したということらしい。

そんなピアノの歴史も面白かったし、スタインウェイの一種ギラついた音が好きではないんだけど、なぜそうなっているのかの一端も見えた。

ホロヴィッツの逸話(日本のホテルにあったピアノがたまたまいたく気に入り、時ならぬサロンコンサートが繰り広げられたとか)にも、神話的痛快さがあった。

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