<< ドボン | main | ほ、ほ、欲しぇぇー! >>

2006/08/20 日

嫌いなものを研究してみる

美しい国へ
…なぁんて、酔狂なことを考えてしまったんですが、なにしろ嫌いなものには時間がかかる(笑)。興味のある内容なら半日で読んじゃうくらいの本に、約1カ月もかかってしまいました。

美しい国へ」 安倍晋三 (文春新書)です。

「嫌い」からスタートしているせいもあるかも知れませんが、なにしろ、その安直なナショナリスティックな内容が鼻につきます。

自由と民主主義から靖国へ、オリンピック(日の丸の掲揚)から国歌≒ナショナリズムへ、9.11から自衛隊へ、拉致被害者から「愛国心」へ、という論理構成はサスガ政治家。長けています。
読者の心の柔らかいところを突きつつ、用意した結論へ…というのは、イッシューを単純化して自分の土俵に持ち込もうとする例のナントカ劇場に通じる手法ですね。

平易な文章そのものは読みやすいのですが、敢えてかみくだいているのか、それとも平易にしか書けないのかは気になるところ。

また、民意が戦争に駆り立てた、(靖国に祀られている英霊は)国家のためにすすんで身を投じた、国民の総意でA級戦犯を犯罪者でなくした、など、主語のスリ替えや論理の放埒さも目立ちます。

全体として、非常にアヤウイ人だという理解がくつがえることはありませんでした。

ところで、いいことも多少は言っています。
「(中国が反日キャンペーンを張る理由をアメリカの政府高官がよく知らなかったことを受けて)戦後日本の民主主義の歴史を、…世界に向けてきちんと説明して来ただろうか?」

そうだ。説明しれ。
自分の靖国参拝について黙してないで。

*
巨人軍論 ――組織とは、人間とは、伝統とは
片や、意外にスンナリ読めたのはこちらです。

巨人軍論 ――組織とは、人間とは、伝統とは」 野村克也 (角川新書)

よく人に、「オレはアンチ巨入だ」と言うと、そいつは決まってニヤリとして、「アンチ巨入は実は巨入ファンなんだ」ということを言います。
オレはたいていムっとして話を逸らしてしまったものですが、それはある意味図星を突かれたからです。
確かに、嫌いなはずの巨入のメンバーは真っ先に覚えるし、ペナントレースの順位やゲーム差も巨入に限って知っていたりするのです。
(さすがに今はそういうこともなくなりましたが)

北海道では特にそうですが(本書の中で京都出身の野村氏もそうだったと言っています)、プロ野球中継といえば巨入戦しかなかった時代です。しかもV9とか言って、とにかく圧倒的に巨入は野球の頂点に君臨していた。それこそまばゆいばかりの存在でした。間違いなく、子供の頃は巨入ファンでした。

でも、その後、Vを逃がしたり下位に低迷する年もあったりするにつれ、徐々にかつて輝いていた巨入に幻滅するようになったような気がする…。
「なぜアンチなんだろう?」と考えるにつけ、そういう理由が脳裏に浮かびました。

この本には、まさにそういうことが“巨入凋落の原因”として書かれていました。日本の野球は紛れもなく巨入が創り、リードして来た。球界の範たる立派な監督と選手ばかりだった。それが今は…という具合です。

そればかりでなく、「中心なき組織は機能しない」「この状況でなぜそのボールを投げるのか、その根拠を明確にしろ(データ活用のコツ)」など、組織論、マーケティング論として読んでも傾聴すべきことが書いてあります。

これは好著でした。

*
だいたい巨入って言うなよ。読売ジャイアソツだろ。(球団運営会社名としては「読売巨人軍」らしいけど)
それを言うなら、昇竜軍とか飛燕軍、猛虎軍とか各チームを日本語で言ったらどうだ。鯉のぼり軍とか、酔鯨軍とかだな。

あれ。大洋って今はホエールズじゃないんだっけ…。(←大洋ですらない)

Trackback URL


Comments

「美しい」というのが気に入らん.まずやることは「住みにくくない」とか,「労働意欲も湧き,社会福祉も充実」とか,もっと最低のことがあるはず.「地球にやさしい」と同じくらい,気にいらんです.
まったく同感ですなぁ。
情緒的な形容詞をつけてもダメなんだよね。

Comment form