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2007/04/26 木

3つの時代小説

なんか突然読みたくなったので、なにかと話題のこの三人の小説を読んでみました。恥ずかしながら、いずれも初。

なんで近ごろ話題なんですかねぇ? 高度成長・団塊世代が暇になったから?(笑)

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小説日本婦道記
小説日本婦道記」山本周五郎(新潮文庫)

某マイミクさんが、この2月にお子さんを出産されました。その時に、お医者さんから出産記念にもらった本だそうです。
出産祝いに山本周五郎? どんな内容なんだ? 妙に気になりました。

短編集です。古き佳き夫婦関係の物語がつづられています。
武士の矜持の中での、こまやかで深い互いの思いやり。「婦道」とは凄いけど、女性の立場からつづられるからこういうタイトルなだけで、男女の間柄はこうでなくっちゃ、という内容ですね。

思いのほかひらかなが多く、例えば柔らかい鉛筆ですらすらと書いたというような文体。穏やかで読みやすく、内容とともにじわっと浸透してくるいいお話の数々でした。

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落日燃ゆ
落日燃ゆ」城山三郎(新潮文庫)

先頃(3/22)亡くなった氏の代表作のひとつ。

山本氏とはうって変わって骨太・重厚なルポを読んでいる感じ。これって小説なんだよね…?(^^;)

東京裁判にかけられ、文民として唯一A級戦犯となり処刑された広田弘毅元首相の物語。彼はむしろ戦争に反対し、軍部にブレーキをかけた。当時から「なぜ彼が裁かれなければならないのだ?」という声も多かったという(検察官さえ「死刑は重すぎる」と呟いたそうな)。
が、「開戦の責任は私にある」として、頑として言い訳も他者の告発も行わなかったがゆえに、有罪となる。
そこには、かれ自身の「中道の美徳」というものがあった。奢らず、ひがまず(威張らず、おもねらず)、公平に、そして運命のままに…。

ただ、個人の覚悟としてはよくても、黙して主張しなかった(真実を必ずしも明らかにしなかった)ことは、日本の歴史認識をも停滞させてしまったのではないか?…読後真っ先に思ったのはそのことでした。

また、先の戦争の原因はもっぱら軍部の暴走にあったと思っていましたが、この小説を読むと、戦争はある気狂いのリーダーが起こすのではなく、時代の空気といったものによって必然的に駆り立てられていくものだ、という感じもして来ます。
現首相の「暴走」の背景として、北朝鮮の非常識への怒り、中韓の「内政干渉」への不快感、テロへの不安、アメリカ国への依存(もしくは隷従)…そういうものが、我々の中にあるのかも知れません。

落日とは大日本帝國の終焉であり、「長州が作った憲法」の最期であったと小説は結ばれています。

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たそがれ清兵衛
たそがれ清兵衛」藤沢周平(新潮文庫)

山田洋次監督で映画化されたアレの原作です。(映画は見ていませんが)

五十石とか百石とかの、しかも普段は「たそがれ」の「がが泣き(ぼやきの意)」の「ほいと」のと揶揄されたり後ろ指をさされている下級武士たちが主人公の短編集。
一見うだつの上がらない彼らだが、いったんお家の一大事には、実は腕に覚えありの剣を抜き、別人のように悪を誅する。カックイイ!!

というだけの話。

読み方が浅いのかなぁ。
巻末の解説にはいろいろ読みどころが書いてあったし、お話が上手いとは思うけど、大衆小説、流行作家とはこういうものか…。

最後はちょっとトーンダウン(笑)。

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Comments

おじいちゃんのお祖父さんは、藤沢周平さんゆかりの鶴岡の下級武士で、廃藩のとき、支給されるものを辞退したといつも云っていたよ。ま それだけのはなし・・・

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