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2007/08/29 水

ある訃報

エドワード・ジョージ・サイデンステッカーさん(日本文学研究者、米コロンビア大名誉教授)(08/27 19:05)
26日午後4時52分、外傷性頭がい内損傷のため東京都内の病院で死去、86歳。米国コロラド州出身。葬儀・告別式は故人の遺志で行わず、後日、関係者がお別れの会を開く予定。
(中略)
米コロラド大卒。戦争中は日本語の語学将校。戦後来日し、東大大学院で日本研究などを専攻した。62年に帰米し、77年からコロンビア大教授。川端康成「雪国」や谷崎潤一郎「細雪」などの英訳のほか、「源氏物語」の全訳も手掛け、日本文学を欧米に紹介。川端のノーベル文学賞受賞の道を開いた。

訃報 北海道新聞

あれっ? この名前知ってる…なんでだろう?と思ったら、今読んでいる本に出ている人だった。

記事の中にもあるけど、「雪国」を訳した。
「国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった。」を、
「The train came out of the long tunnel into the snow country.」と訳した。

なるほど、「列車は長いトンネルを抜け、雪国に出た。」という即物的な描写と、それに加え「列車に乗った観察者である私が“くに”をまたぐトンネルを抜け、一面の雪景色に触れて感慨を得た」というニュアンスまで含んでいると思われる原文とでは、イメージが全然異なりますな。

本の中でこのくだりは、かの国とこの国の言語の「視点の違い」を説明するために引かれたものだけど、このように「言語が違う」という以上に「ものごとの感じ方そのものが違う」のであって、根本的にはわかり合えないということかも知れませんねー。

*
主語を抹殺した男/評伝三上章
ところで「本」とは、

主語を抹殺した男/評伝三上章」 金谷武洋 (講談社)

のこと。
三上氏に私淑してやまない以前読んだ本の著者が、その「日本語に主語は要らない」論を唱えた天才的かつ孤高の国語学者の生涯にスポットを当てた評伝です。

業績以外の生涯をなぞるということに若干の違和感は覚えつつ、昭和初年から約70年を生き、当時の「権威」に立ち向かった反骨の人の物語、面白く読み進めております。

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