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2010/05/19 水

もう一つのA代表

サッカーW杯・南アフリカ大会の開幕まで1カ月を切った。代表選も最近はサッパリ見なくなったけど、今回の日本はどうかなぁ。どうも前回なみなんじゃないかなぁ。
…つまり、2敗以上して予選敗退。

遠くで開催されるせいもあるのか、(治安の話以外)国内の話題も期待も盛り上がっていないように見える。

というところで、本屋でこんな本を見つけたので買ってみた。


考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114)
考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか?」 イビチャ・オシム (角川oneテーマ21新書)


W杯へ向けての各国の準備状況や、岡田監督に配慮しつつ日本の戦い方について提言を与える。そして日本サッカーは未来へ向けてなにを準備すべきかについて語る。

分厚い本ではないけど、内容は濃い。

まず、「ベスト4」という大きな目標を持つのは当然だし、それに対して悲観的である必要はない、という。選手ばかりでなく日本國民もだ。萎縮し恐怖しては達成できるものもできなくなってしまう。ただし、イケイケドンドンの盲信ではいけない。

こうした凛とした言葉に、読み手は大いに勇気づけられる。

一方、ディシプリン(規律)という単語がよく出てくる。日本人は規律正しい國民だが、ことサッカーではそれが硬直化に繋がっている、という。
サッカーのディシプリンを背骨に持っているチーム(国)は強いが、これは練習などで身につくチームの戦術や個人の運動能力以前にあるサッカーの“常識”、もっと言えば“サッカー脳”を体内に持っている、という意味に思われる。

大事な試合になると平常心が保てない、というのも同根かも知れない。

こうした言葉には、日本は世界での経験、サッカーの伝統が圧倒的に少なく、まだまだW杯で(フロックなしに)勝ち抜く段階にはないのだろうと思わせられる。

日本には…もちろん悲観する必要はないが…まだ早い、というのが本音のところではないだろうか。


外側から見た、日本選手の特徴(弱み)も、ズバズバと突いてくる。

率先して行動を起こさない。
リスクを冒さない。
ハングリーさがない。
無関心である。
責任感がない。
自由がない。

もうほんとにズバズバです。

でも、なーに言ってんだいこの人、という気がしないのは、その一つひとつに思い当たるフシがあるからだ。
話題はサッカーの周辺から動かないが、内部からはなかなか見えない「日本人論」、または「日本そのものへの提言」と読んでもいい、優れた洞察がある。


オシム氏が元気で、今回も監督として日本を率いたらどんなだったろうと想像する。もう一つ輪郭がはっきりしない現チームと比べて、少なくとももっと熱があり、可能性が感じられたのではないだろうか。


なお、翻訳のアヤかも知れないが、細部を彩る独特の言い回しにも“オシム語録”が感じられて楽しい。

彼ら(カメルーン)の両手に熱いポテトを握らせて、どうするかを見極めた方がいい。
審判(の資質やジャッジ)は一種の自然災害である。
負けることへの恐怖心がないときには、選手は美しいプレーをする。


痛快な本であった。