2006/07/06 木

中国語の妙(てゆーか変てゆーか)

昨日、友人のBLOGを読んでいてたまげたのは、このシトは新華社通信まで読んでるのか!ということのほか、アメリカ国の「CNN(Cable News Network)」を中国では美国「有线电视新闻网(有線電視新聞網;新闻というのは新聞じゃなくてニュースのこと)」って言うのか、ということですねぇ。なるほど確かに。やるな中国。日本では「CNN」とか「ケーブルニュースネットワーク」とか言って思考停止(もしくは、アメリカ国の植民地化)しているわけですが、ちゃんと訳しています。有線なんです、CNN。

と言いつつテポドンは「大浦洞」(北朝鮮の地名らしい;なお「テポドン」はアメリカ国のコードネームで、北朝鮮では「白山頭」と呼ばれているらしい(参照))で、ブッシュは「布什」、プーチンは「普京」なんですが…。固有名詞はしょうがないやね。

ところでその普京氏の本日配信のニュース。これ、なんか妙ですな。下の方の連続写真です。
6月28日にプーチン氏、克里姆林宫(クレムリン)の広場でアメリカ国やフランス国からの観光客と歓談。その中の4~5歳の男の子の前にひざまづいて名前を尋ね、おなかにチューした。みたいな。男の子の頭をなでりなでりした後、人ごみの中に消えた。みたいな。

何なんでしょうか。
プーチン氏も氏だが、中国のメディア、なんか時空を超越しているような妙な雰囲気です。

2006/07/05 水

99・9%は仮説

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方
99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方」 (竹内 薫) 光文社新書

宗教の次は科学です。(笑)

  • 飛行機がなぜ空を飛べるか、その原理は実はよくわかっていない。
    (そういや昔、「バイクが倒れずに走れる原理はよくわかっていない」という話も聞いたことがあります)
  • 「宇宙はほんの数秒前に誕生したばかり」という仮説を否定できる証拠はない。
  • アインシュタインが「生涯最大の過ち」と言った「宇宙定数仮説」は、今は正しいとされている。

…このように、科学的な事象も、ほじくっていくとほとんどは「仮説」に過ぎず、また「客観」もしょせんは人間の「主観の寄せ集め」に過ぎず、世の中に100%確かなんてものはまず存在しない。
だから、教えられたことやいま観察できることを鵜呑みにすることなく、頭(考え方)を柔軟に保ちましょう。
そんな本であります。

こうして見ると、「科学」も相当に人間くさい営みなんですねぇ…。

2006/06/28 水

わかる仏教史

近ごろ晴登雨読、ってなブログになってますが…。
あ、食う話もあるか。
いや、いいんじゃないでしょうか!

わかる仏教史
*
さて、友人のブログ経由シリーズです。
わかる仏教史 (宮元啓一) 春秋社。

お釈迦様から始まる仏教3千年の歴史を、易しい言葉で1冊にまとめた本です。
めくるめく東洋思想の繚乱も、こうして一つの軸でつまんでいくと、ちゃんと1本の樹のように見えるんですねぇ。

ところで、私はさらにこの本を3行にまとめちゃいます(笑)。

  • お釈迦様入滅後、100年を経ずして金儲けや権力闘争に走る仏弟子たち。
  • その後、お釈迦様は言及しなかった「あの世」を始め、壮大な宇宙観(妄想)が構築された。
  • 中国を経て日本に伝わり、国の都合や庶民感覚にねじ曲げられつつ葬式仏教となり果てる。

これらが、3千年を通してくりひろげられた、と。ああ無常。
しかしこうして見ると、仏教も相当に人間くさい営みなんですよ。
勉強になりました。

*
「あの世」についてはもう一言。
お釈迦様…ゴータマ・ブッダは、死後の世界のこと等、不可知なことは水掛け論になるだけだからとして、問われても答えなかったそうな。
阿弥陀如来とか弥勒菩薩とか、56億7千万年後の救済とか途方もないことを考えたのは、みな後世の仏弟子たち。ということでした。

2006/06/21 水

リサイクルしてはいけない

環境にやさしい生活をするために「リサイクル」してはいけない
リサイクルしてはいけない (武田邦彦) 青春出版社

ペットボトルをリサイクルすると、単純に焼却した場合の3倍以上の資源・エネルギーを消費するという事実。
「紙を使うと森林が破壊される」は嘘であるという事実。
自然が46億年かけて貯めてきた資源を、人間の肥大した文明社会はわずか100年で使い切ろうとしているという事実。

こうした事実を突きつけられて、愕然としない人はいないでしょう。
われわれの「常識」と随分かけ離れているからです。

そりゃ、「ゴミの分別といったって、けっこうみんないい加減だよなぁ」とか「どれほど、再生資源になるのかなぁ」とかいうことは何となく肌合いとしては感じていても、行政やメーカーやCMがこぞって分別やリサイクルを奨励しているのですから、よかれと思ってせっせと分別廃棄をしては環境に優しいことをした、と満足もするでしょう、普通。
でもそうした努力が、収集(移動)・洗浄・選別・再成形の過程で、ガソリンや電力、人間の活動という別の形でエネルギーの浪費を生み出しているとしたら、われわれのやっていることは一体なんなのでしょうか。

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石鹸と合成洗剤の比較など、「?」な議論もあったのですが、中でもうひとつ禿同だったのは、「あなたは真夏に暖房をつけますか?」という問いです。
誰しも「まさか。何を言ってるんですか」と答えるでしょう。でもエアコン(クーラー)は、「外を暖房する機械」である、ということです。自分だけが快適になって、環境のことは顧みない。中央だけがよくて地方を顧みない。先進国だけがよくて後進国を顧みない…人間とは、そうした生き物なんですね、結局。

2006/06/12 月

脳はなぜ「心」を作ったのか

脳はなぜ「心」を作ったのか―「私」の謎を解く受動意識仮説
さぁー来た来た来た、…やばいぞ!

ひとに薦められ、タイトルに惹かれて開いてみたこの本「脳はなぜ「心」を作ったのか―「私」の謎を解く受動意識仮説(前野隆司)」のプロローグを読んで真っ先に思ったのはそんなことでした。
正確にはプロローグだけじゃなくて、何だろうこの人、と思って開いた奥付のプロフィール欄。慶応大学の教授で、ロボット工学者である。
ロボットの先生が脳と心について考えている! やばいぞ! というわけです。

プロローグには、「私は、生物の脳が、なぜ、なんのために心を造ったのか、そして、心はどんなふうに運営されているのか、という心の原理を理解した」と思い切り書いてあります。
いったいこの人は天才か。ユーモアリストか。はたまたパンドラの匣を無理に開こうとするマッドサイエンティスト(エンジニア)か…その話題のゆくえに興味惹かれるとともに、「ロボットに心は可能か」なんていう恐るべきテーマにどのような解を与えるつもりなのか、とにかく急かされるような気持ちで読みました。

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ネタバレってこともあるので、その答えはここでは書きませんが、なるほど、以前書いた「ロボットは心を持つのか?」(PLUTOの項)という疑念には、一定の解答を与えてくれました。でももうひとつの「理解不能な恐ろしいものに違いない」という思い込みを解いてくれるものではありませんでした。

そういう意味では、この人マッド・サイエンティスト(エンジニア)までは言わないまでも、いささか楽天的過ぎるのではなかろーか? やっぱやばいぞ。というのが読後の率直なところです。

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さて、ロボットなどの人工物が「心」を持つとき、それは「人間と同じような」ものでは恐らくないだろう。取りあえず思い浮かぶのは、これまた以前みた「マトリックス」の世界です(マトリックスの項)。

「マトリックス」の世界では、無数の人間がホースで繋がれている(物語では「エネルギーを採っている」ような設定だったと思うが)。それを司っているのは、人間にはコミュニケート不能の上位概念(コンピューターだっけか)でした。

どうも、人間が作る「もう一つの知能」というのは、そういうものになるんじゃないかと思います。

ま、それはお話だけど、そういえば人間はもう繋がっています。インターネットです。
また思い出した。先日読んだばっかの本。「不特定多数無限大」…「たくさんの個が基本的に等価で結び合わさった時に、今までとはまったく違った価値世界が生まれる」ってやつ。人間は結びあわさって、ニューラルネットワークのように地球上のあちこちで明滅を繰り返し、ある「心」を既に造っているのではないか(人間のニューロン一千億個に比べればまだ1/100程度の規模だが)。その全体像を人間自身はもちろん観察できない。それを観察できる者(=心)とは一体…?

以前に読んだ本や観た映画にも繋がって、非常にエキサイティングなひとときでした。

2006/05/26 金

室の梅―おろく医者覚え帖

室の梅―おろく医者覚え帖
室の梅―おろく医者覚え帖」 宇江佐真理 (講談社文庫)


隅田川に女の水死体が上がった。これは自殺か、それとも…? 「死人はただ死に顔を晒しているだけじゃねェんだぜ。ちゃんとな、手前ェはこんなふうに死にましたと言っているのよ」 …そう嘯くのは、容貌魁偉だがどことなく愛嬌のある江戸八丁堀の検屍医、人呼んで“おろく医者”美馬正哲。産婆の女房・お杏とともに殺しの痕跡を解き明かす!

*
なんてね、久しぶりに虚構を読みましたな。
山で死んだ人を“おろく”という…云々なんてぇことを調べているうちにたまたま行き当たった本なんでござんすが、なかなか面白うござんしたよ。人物も立ってますし、時代の風俗や検屍の目のつけどころなんかもしっかと描かれておりましてな。
それにたまにゃあこう、カナがほとんど出て来ない本もよござんすね。

著者のことは知らなかったんですが、1949年生の函館の人ですな。

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で、おろくてぇのは、別に山で死んだ人に限ったことじゃあなく、南無阿弥陀仏の6字のこと…つまり死人全般に使った俗語のようでござんした。へぇ。

2006/05/12 金

「しゃっこい飲み物どんだべぇ」

ダイドードリンコ(大阪市)が、津軽弁で話す自販機を開発。(以下津軽弁風に)4月中旬から青森空港やJR青森駅など青森市内中心に42台おいだっきゃ。
 「しゃっこい(冷たい)飲み物どんだべぇ」と定期的に呼びかけ、ジュースこ買えば「つりっこ忘れねんでの~」。昼時は「午後もけっぱって(頑張って)の~」。
 3年前の「関西弁」が評判こよくて今回、名古屋弁や博多弁と一緒に造ったど。ダイドーの担当者は「ばりばりの津軽弁だと観光客が分からない。少し緩めました」。

asahi.com:「しゃっこい飲み物どんだべぇ」 津軽弁自販機造ったど - 暮らし

朝日もなかなか粋な記事書くね。(asahi.comだが)

2006/05/09 火

凄みのある書評

朝、他にやることあるっちゅーのに、つい引き込まれて読み込んでしまった。
松岡正剛氏の「カムイ伝」書評であります。

「カムイ伝」を読み通したことはないけど、一応リアルタイムで知っているし、白土三平氏本人ともども日本マンガ史の中でひときわ鋭い異彩を放っていることも知っている。
けど、単に知っているというだけでキチっと読んでいないことが激しく悔やまれるほどの時代的位置づけと内容の深みを突きつけられ、「うーむ」と唸るしかなかった…そしてお金持ちだったら、すぐさま本屋へ既刊全15巻を買いに走ったろう。お金持ちでないので、いつか自遊空間ででも…と思った辺りが情けないが。

まったく、優れた評論というのは、それ自体ひとつの作品なんであります。

*
自遊空間で(?)読んでみたいリスト。
・ゴルゴ13
・20世紀少年
・カムイ伝

2006/04/18 火

本当に大切なものは目に見えない


↑当然、当時買った
本とは異なるです。
学生時代に購入して以来の懸案のひとつであった(またもや30年ぶり)、「The Little Prince(星の王子様のイギリス語訳本)」を遂に読了!

最初の2~3ページのところどころに、わからない単語の訳語や赤線が書かれている。辞書を引き引き読み始めたらしいのが涙を誘うのである(当然、以降のページには開いた形跡すらない(笑))。
ま、いま思えばさほど難しいイギリス語じゃないんだけどさ…だって、オレが読み通せる程度だもん。

さて。
王子が星に帰るにあたって飛行士にいう言葉が胸を打つ。「どれが僕の星かわからなければ、どの星も微笑んでいるように見えるでしょ」。(←意訳)
全編を覆うテーマは、大人って目の前のファクトにばかり拘泥している。でも“それ”だけが重要なんじゃないよ、ということと思われる。

ものごとはおしなべて、テレビを見ればパンツまでおろされ、インターネットを開けばケツの穴まで((c)FSNOW)むしられ、さらされている昨今である。われわれはそうした姿を、ごく簡単に入手することができる。
“目に見える”情報、物量、知識は膨大になった。一方、物事の本質や心をどれほど感じられるか。考えさせられることではある。
出版から60年を経て読み継がれる理由もわかる気がする。

「子どもだったころのレオン・ウォルトに」と献辞にあるが、かつて子どもだったわしらが、大人になって再び手にとってみるべき本の一つかも知れない。

参考:
星の王子様公式ホームページ

2005/11/30 水

人類の生命記憶

胎児の世界―人類の生命記憶」(三木成夫・中公新書)を読む。

南洋から流れ着いた椰子の実の味に遙かなる過去を思い起こし、子供が体調を崩した関係で張ってしまった奥さんの乳を飲んで生命の幽遠を知る…みたいなエピソードから始まるのは、例の「個体発生は系統発生を繰り返す」(胎児はその発達段階で生物進化の過程をなぞる)というアレの物語である。


結論は「まんま進化の過程をすべてなぞるわけではない」ということなんだけど、お話しは現在から30億年を一気にさかのぼり、お母さんのお腹から遠く宇宙までを一息に飛び越えて行く。

比較発生学…なる分野の大家であった著者。
発生から4日目に生命の危機を迎える鶏卵と向き合う日々とか、胎児の標本にメスを入れるときの静かな、だがドラスティックな心の動きとか、鬼気迫る描写もある。

新書なんだけど、すげー巨大な内容。
うまく咀嚼できなかった…(^^;)。

(2005/12/1追記)

そう言えば松岡正剛氏の書評にも凄みがあります。
この評を読んで読みたくなった本でした。
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